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仙台高等裁判所 昭和56年(ラ)87号 決定 1982年5月10日

抗告人(債務者兼所有者) 小野タカノ

代理人弁護士 沢藤純一郎

債権者北田正夫・債務者兼所有者抗告人、所有者小野芳雄間の盛岡地方裁判所昭和五五年(ケ)第九一号不動産競売事件について、盛岡地方裁判所が昭和五六年一一月五日付で売却許可決定に対し、上記抗告人から執行抗告の申立があったので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件執行抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一、本件執行抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二、民事執行において、担保権の不存在又は消滅を理由として担保権の実行としての競売を阻止するためには、まず、当該担保権に関する民事執行法一八三条一項一ないし四号の文書を提出して競売の手続を停止すべく、次にこれらの文書がない場合にはその競売開始決定又は差押若しくは差押決定に対し執行異議を申立てるべきであり(同法一八二条、一八九条、一九一条、一九三条、一九五条)、もしこの執行異議が棄却された場合は、これに対し執行抗告をすることは許されず(同法一〇条一項)、担保権実行禁止の仮処分を得て競売手続を停止し(同法一八三条一項五号)担保権不存在確認等の訴を提起し、判決手続においてその成否の判断を受けなければならない。そして、この執行異議は買受人による代金納付があるまで(動産競売にあっては買受人が当該動産を即時取得する時期まで)許されると解される(同法一八四条、一八九条、一九三条二項)ところである。

三、ところで、本件抗告の理由によると、抗告人は本件不動産競売申立時以前に担保権が消滅したとして、その競売の開始及び手続の不許を求めるものであり、また、抗告人が民事執行法一八三条一項各号所定の文書を所持していないことが明らかである。

そうすると、抗告人はまず本件不動産競売開始決定に対して執行異議を申立てるべきであり、この執行異議を申立てずに担保権の消滅を理由として本件売却許可決定に対し、執行抗告をすることは、民事執行法が担保権の実行としての競売の開始にあたり、担保権の不存在又は消滅を理由として簡易に執行異議をすることを認め、この執行異議において主張、立証を尽さない債務者、所有者等の事後的主張を許さないとした趣旨(同法一八二条)に照らし、許されないものといわなければならない。

してみると、本件執行抗告はその主張自体失当である。

四、よって、民事執行法二〇条、民事訴訟法四一四条、三八四条、九五条、八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 中島恒 裁判官 石川良雄 宮村素之)

<以下省略>

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